一日のうちで一番苦手な時間帯といったら、やっぱりそりゃあもう誰がなんといっても朝。朝ですよ。
目覚ましアラームの四重奏を遠くに聞きながら目を開けて、意識が浮上してくるまで待つことしばし。全身を包む眠気は古代王家の呪いのように濃く篤く、頭は痛むし目はかすむし、おまけに布団の中にいるのに手足が冷たいという不思議現象にも見舞われて。
目が覚めても身体がだるくて動き出せない。我ながら、低血圧にしたってちょっと規格外という気がする。
だって毎日ですよ? 前日の体調の良し悪しだとか、早く寝たとか夜更かししたとかに関わらず、一年中、毎日まいにち寝起き絶不調。それがあたしの日常なのです。
イラスト:朱佐々茂矢様
あたし、アリア。
私立スバル学園在籍、中等部二年、十四歳。好きなものは甘いお菓子、苦手は早起き──というか、朝そのもの? よっぽど早く起きなければ朝ごはんも喉を通ってくれないし、自然と気持ちも憂鬱になる。
お昼に近づくにつれて徐々に元気になってくるんだけれど、起き抜けから登校、朝のホームルームを経て最初の授業あたりまではぶっちぎりの低空飛行、開店準備中、暖気運転状態なのだ。
世間の皆様は一体どうやってこれを乗り切っているのか、何か良いコツでもあるものなのか、そこらの道往く人を捕まえて片っ端から訊いて回りたい衝動に駆られる。
……や、やらないけど。遅刻しそうだからね!
「アリア、遅刻しちゃうよー。今日も起動に時間がかかったのぉ?」
振り返ったクラスメイトが遠くから声をかけてくる。起動とか言わないで、ポンコツ機械みたいに聞こえちゃう!
あ、予鈴。まっずい本気で遅刻しちゃう! 生徒会が遅刻取り締まりをしてるかも。ピンチです!
うー、うー、でもやっぱり体調が……。どうしよう。
⇒ (1) 無理して走る
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