このあと合流した清白と雲取は、もちろん、鵺を女性と勘違いした。
彼らは鵺の頸を拝見する機会がなかったし、わざわざ教えると面倒なことになりそうな気配を察した葛葉が賢明にも口を閉ざしたため、仕方のないことである。
夕刻になって物部の里から迎えの者が到着し、葛葉たちと親しげに言葉を交わすリッカの姿と、その懐から覗く瑞宝を見て盛大に頭を抱えていたが……こちらもまたやむを得ないことであろう。
「世の中にはいろんな者がおるのう」
「なぁに独り言なんか言ってるのよ?」
「いや何も。物部の里はまだかのう」
「もうすぐそこよ。ほら、見えてきた。ジジババどもが歓待の支度をしてるし、昔語りを聞きがてら、今夜は泊まっていくといいわ。湯浴みもできるわよ」
「……今度は土足で踏み込んでくれるなよ」
多少恨みがましく言ってみたものの、鵺はちっとも悪びれることなく笑い声をたて、弾むような足取りで先に進んでいく。
「何やらどっと疲れたのう」
諦めにも似た境地で呟きつつも、丁重に里へと迎え入れられる頃には、早くもこの風変わりな鵺の存在に馴染んでしまったことを自覚する葛葉であった。
END