いくばくかの不安は、そりゃまあ、あるけれど。確かに見た瞬間は度肝を抜かれたけれど。
 でも、ここまで育てたからにはいまさら処分なんて、ねえ。
 その日からあたしは謎植物の世話を始めた。適当に水をまいて観察する、ただそれだけ。周りの雑草を抜く必要はなかった。謎植物の周りにはなぜか雑草は一本たりとも見当たらないからだ。
 謎植物は呆れるほど強靭だった。肥料もなしにぐんぐん成長する。絡まる蔦は際限なしに伸びていくかのようだ。あたしが仮入部した日には表からは陰になって目立たない程度だったのに、三日経ち一週間経ち、そして今や誰の目にも明らかなまでに生い茂っている。
 引っ込みがつかずに対処をためらうこと数日。手をこまねいている間にも怪しい植物は増殖する。
 これはまずい。さすがにマズイ。このままでは中庭が謎植物の蔦でできた絨毯に埋没する!
 そうこうするうちに「あの蔦の下には死体が埋まっている」とかいう噂話が生徒たちの間でまことしやかに広がり、謎植物の蔓がハルイ先輩の丹精する花壇にまで侵食を開始するに至って、ついに先輩は重い腰を上げたのだった。
「やむを得ない。誰かに相談しよう」
「誰かって……誰か心当たりのある人でも?」
「教育実習生のセレシアス先生か……あるいは生徒会長あたりなら名案を持っていそうな気がする」
 園芸部には特定の顧問の先生はいないというし、これはもうあたしたちだけの手には負えそうもない。妙に博識なセレシアス先生か、才色兼備と名高い生徒会長の月城先輩か。どちらに相談をもちかけようか。


(1) セレシアスに相談する

(2) 月城雪に相談する