ファンタジースキーさんに100のお題

015. ヒーロー養成ギプス


──さあ皆様お待ちかね、今週も“突撃特攻無礼講インタビュー”のお時間がやってまいりました。本日はゲストにこの方をお招きしています。月姫こと軍武官長閣下の夫君、高官唯一の常識派(自称)、中隊長アルメー・フェルンです!

フェルン「こんばんは、フェルンです。……。」

──あ、今(自称)ってところに突っ込むべきかどうか迷いましたね? 迷った挙げ句に流してしまうあたり、なんとも中途半端に小心チックで親しみが持てますねー。

フェルン「はあ……どうも」

──別に褒めてませんから。

──えー、改めまして、本日はお時間を割いてくださいまして誠にありがとうございます。この春真っ盛りに焼き芋屋を探して城下を駆け巡ったり、上司にマッサージを仰せつかって手が痺れるまで解放してもらえなかったり、意味なくダーツの的にされたりと、何かとご多忙でいらっしゃるのに。

フェルン「なっ、なんでそんなコト知っ……!?」

(シャッターを切る音)

──はい、綺麗に撮れましたよー。『アルメー・フェルンは顔面蒼白状態と半泣き顔の写真映りが抜群にいい』ってホントですね。あとで記念に焼き増しして城中に配っておきますから。

フェルン「なんですかソレは!?」

──さて本題に入りましょうか。

フェルン「無視!?」

──読み上げます。七四四年、新規候補生として採用。同年十一月、軍武官に。勤務地は0の域。七四五年二月、小隊長に昇進。同年八月結婚。七四六年六月、中隊長に昇進。と、以上がアルメー・フェルンの経歴なわけですが……どうですか、そろそろ何か新しい出来事が起こりそうな予兆はありません? 離婚とか。

フェルン「ありませんよ!!」

──ムキになるところが怪しい。口でいくら否定してもネタは上がってるんですよねェ。アルメー・フェルンが男と不倫したのが原因で別居まで秒読み段階だって、有力筋の情報が。

フェルン「ちょっとエディック様どれだけウソを言いふらしたんですかぁあああ!?」

──情報の提供者は教えられませんよ。某関係者、とだけ言っておきましょうか。おっと、さすがに頭を抱えてるポーズも堂に入ってますねえ。はいもう一枚。

(シャッターを切る音)

フェルン「撮るなって!」

──それで不倫相手の男性、というか五の域の書店のご子息、というかぶっちゃけギルバート氏とは今も続いていらっしゃるのですか?

フェルン「続くも何も、完全無欠に誤解! 冤罪! 誹謗中傷ですから!」

──意外と往生際が悪いですね。なら一応そういうことにしておきましょうか。

フェルン「一応って……! 大体その件はエディック様たちが面白がってこじらせただけなんですよ! 本人は俺を女の子だと勘違いしてて、それでシキが」

──アルメー・フェルンの不倫疑惑、今後の展開に請うご期待ということで。

フェルン「勝手にまとめてるし……! なんなんだよこの企画……」

──さてさて、アルメー・フェルン宛てに質問やご意見等が届いております。っていうか城中と街頭でアルメー・フェルンへのメッセージを募集したんですけどね。ちびっこから五十年前の紳士淑女、専門官から候補生まで幅広く!

フェルン「その募集活動、きちんと許可を取ってるんでしょうね……?」

──HAHAHA! では一枚目。“どうしていつも背中に足あとついてるの?”

フェルン「がふっ。い、いつもではありませんヨ……。それはね、愛のコミュニケーションというかスキンシップというか、条件反射で背中を差し出してしまうというか」

──筋金入りのM体質ってことですねー。いやー、お葉書のいたいけな筆跡が切ないです。そんなんでよく武官の高官入りができましたね?

フェルン「ほっといてください」

──二枚目。“B級学校の頃と思われる女装写真を拝見しましたが、昔からそういう性癖があったんですね。女装癖に目覚めたきっかけは何ですか?”

フェルン「目覚めてないって! 姉さんたちが面白がって着せてただけですよ! ってかどこでそんな写真を見たんですか!?」

──“実家のお姉さんたちに頭が上がらないシスコンってほんと?”

──たしかアルメー・フェルンのご実家は十の域、酒房を営んでいらっしゃるんですよね。今はご母堂と双子の姉君の三人で切り盛りしておいでとか。

フェルン「はい。頭が上がらないっていうのは……そのとおりかな。昔から二人がかりでしょっちゅう構われてたし。歳がちょっと離れてるせいかな。B級学校に上がる前は姉さんたちの後をついて回ってたような記憶がたくさんあります」

──お姉さんが格闘技や関節技に凝っていた時期があって、攻撃に耐えるために身体を相当鍛えた、というレア情報が。

フェルン「だからその出所はどこなんですか!? うう……怖いなぁ……」

──今日のアルメー・フェルンの武官としての土台はお姉さんの関節技が作ったと言っても過言ではない、と。なるほど、なるほど。見るからに愛すべきヘタレ君なアルメー・フェルンがそれでもここまで成り上がれたのには、それなりの生活環境があったからこそなんですねぇ。納得です。

フェルン「うわ。面と向かって物凄い暴言を吐かれた気がする……」

──気のせいですよ。ではお次。“腹筋ってどうやったら割れるんですか?”

──ああ、そういえばカニ腹筋の持ち主だと巷で噂のようですが、ちょっと失礼……おお割れてますね。

フェルン「人の服剥ぐのやめてくださいよ!」

──隠れ露出狂のくせにぃ。して、その腹筋を作る秘訣とかは?

フェルン「いちいち引っ掛かるなぁこの人……。別に秘訣なんてありませんよ。子どもの頃から毎日腹筋を強要されてれば誰でも割れますって」

──毎日? やはりお姉さん方ですか?

フェルン「ご明察。『美容と健康と生命力活性化~!』とか言って姉弟三人で毎晩筋トレ……。今でも職業柄欠かせませんけど」

──そうなんですか。えー、簡単にまとめますと、つまりアルメー・フェルンは、男と不倫してる上にM体質で女装趣味のあるシスコン、と。そういうことになりますね。やっぱり。ふふふ。

フェルン「ちーがーうぅぅぅうう!!」

──ばっちり確認が取れましたところで、時間も押しておりますし、今回はこの辺でお別れとさせていただきます。次週のゲストはアルメー・エディック。今回の結果を分析してコメントを頂戴する予定です。アルメー・フェルンと身近に接している御方ですから、一体どんなレア情報が飛び出してくるのかと思うとワタクシ含み笑いがとまりません! どうぞ皆様お楽しみに★

──それではアルメー・フェルン、どうもありがとうございました~!

フェルン「ああああああ……!!」

 END