夢想百題

015. ヒーロー養成ギプス (2)


──さてさて、アルメー・フェルン宛てに質問やご意見等が届いております。っていうか城中と街頭でアルメー・フェルンへのメッセージを募集したんですけどね。ちびっこから五十年前の紳士淑女、専門官から候補生まで幅広く!

フェルン「その募集活動、きちんと許可を取ってるんでしょうね……?」

──HAHAHA! では一枚目。“どうしていつも背中に足あとついてるの?”

フェルン「がふっ。い、いつもではありませんヨ……。それはね、愛のコミュニケーションというかスキンシップというか、条件反射で背中を差し出してしまうというか」

──筋金入りのM体質ってことですねー。いやー、お葉書の幼気(いたいけ)な筆跡が切ないです。そんなんでよく武官の高官入りができましたね?

フェルン「ほっといてください」

──二枚目。“B級学校の頃と思われる女装写真を拝見しましたが、昔からそういう性癖があったんですね。女装癖に目覚めたきっかけは何ですか?”

フェルン「目覚めてないって! 姉さんたちが面白がって着せてただけですよ! ってかどこでそんな写真を見たんですか!?」

──“実家のお姉さんたちに頭が上がらないシスコンってほんと?”
──たしかアルメー・フェルンのご実家は十の域、酒房を営んでいらっしゃるんですよね。今はご母堂と双子の姉君の三人で切り盛りしておいでとか。

フェルン「はい。頭が上がらないっていうのは……そのとおりかな。昔から二人がかりでしょっちゅう構われてたし。歳がちょっと離れてるせいかな。B級学校に上がる前は姉さんたちの後をついて回ってたような記憶がたくさんあります」

──お姉さんが格闘技や関節技に凝っていた時期があって、攻撃に耐えるために身体を相当鍛えた、というレア情報が。

フェルン「だからその出所はどこなんですか!? うう……怖いなぁ……」

──今日のアルメー・フェルンの武官としての土台はお姉さんの関節技が作ったと言っても過言ではない、と。なるほど、なるほど。見るからに愛すべきヘタレ君なアルメー・フェルンがそれでもここまで成り上がれたのには、それなりの生活環境があったからこそなんですねぇ。納得です。

フェルン「うわ。面と向かって物凄い暴言を吐かれた気がする……」

──気のせいですよ。ではお次。“腹筋ってどうやったら割れるんですか?”
──ああ、そういえばカニ腹筋の持ち主だと(ちまた)で噂のようですが、ちょっと失礼……おお割れてますね。

フェルン「人の服剥ぐのやめてくださいよ!」

──隠れ露出狂のくせにぃ。して、その腹筋を作る秘訣とかは?

フェルン「いちいち引っ掛かるなぁこの人……。別に秘訣なんてありませんよ。子どもの頃から毎日腹筋を強要されてれば誰でも割れますって」

──毎日? やはりお姉さん方ですか?

フェルン「ご明察。『美容と健康と生命力活性化〜!』とか言って姉弟三人で毎晩筋トレ……。今でも職業柄欠かせませんけど」

──そうなんですか。えー、簡単にまとめますと、つまりアルメー・フェルンは、男と不倫してる上にM体質で女装趣味のあるシスコン、と。そういうことになりますね。やっぱり。ふふふ。

フェルン「ちーがーうぅぅぅうう!!」

──ばっちり確認が取れましたところで、時間も押しておりますし、今回はこの辺でお別れとさせていただきます。次週のゲストはアルメー・エディック。今回の結果を分析してコメントを頂戴する予定です。アルメー・フェルンと身近に接している御方ですから、一体どんなレア情報が飛び出してくるのかと思うとワタクシ含み笑いがとまりません! どうぞ皆様お楽しみに★
──それではアルメー・フェルン、どうもありがとうございました〜!

フェルン「ああああああ……!!」


END