6周年記念
中央棟・132会議室にて (7)
──15.あなたの家族の事を聞かせて下さい。
エルガー「オレはさっき言ったからもういいよな? 頑固親父と刃物狂いの大兄貴と守銭奴の小兄貴が実家にいる。あと温厚なくせして家庭内最強の母親」
アリア「にぎやかで楽しそうな家族だね」
エルガー「にぎやかっつーか、ひとつ間違うと血ィ見るっつーか」
セレシアス「まあ、そこはエルガーの肉親なわけだから」
エルガー「ちくしょう、またしても反論できねェ」
アリア「あたしは……姉上だけ。もう何年も会ってないけど、時々お手紙をくれるの」
エルガー「陛下はアンタのこと心配してたぜ。少なくともオレにはそう見えた」
アリア「……ん。そっかぁ」
エルガー「セレシアス、アンタは? 訊かないほうがいいか?」
セレシアス「……かまわない。母親が、いるんだ。長生種の。父親のほうは、もうずっと消息不明でね」
アリア「そうなんだ……」
エルガー「へえ……」
セレシアス「生きてさえいれば、いつかきっと──。そう思えるように、最近はなったんだよ」
──16.今まで行った善行を聞かせて下さい。主観的・客観的、どちらでも良いです。
アリア「うーん……あたし、特にないかも〜」
セレシアス「まあ、アリアの場合は環境がちょっと特殊だしな」
エルガー「オレはいっぱいあるぜ。酔っ払ったおねーさんを介抱してやったり、若奥様が買い物袋から落としたリンゴを拾ってやったり」
アリア「まあ……善い行いには違いない、かなぁ?」
セレシアス「そうだな。一応は」
エルガー「なんか引っかかるみたいな言い方しやがって。で、アンタは?」
セレシアス「……昔、海岸のゴミ拾いを習慣にしていた」
エルガー「そりゃまた地道だなァ。どーせアンタのことだから、誰の目にもつかないような早朝に一人でやってたんだろ?」
セレシアス「ああ。といっても、海べりの町に住んでいた間だけの習慣だったけどな」
──17.今まで行った悪行を聞かせて下さい。主観的・客観的、どちらでも良いです。
アリア「厨房でつまみ食いしました」
エルガー「行儀悪ィな。いちおう姫君のくせに」
アリア「うん。メルに叱られたよ〜」
エルガー「っと、オレも人のこたァ言えねーか。ティキュの茶菓子をまた勝手に食っちまって、鉄拳つきの説教されたばっかだからな」
セレシアス「懲りないな……」
エルガー「いや、あれは罠だって絶対。夜中に任務から帰るとだな、微妙に小腹が空いてるわけだ。で、ちょいと事務所の給湯室を覗いてみれば、なんだか美味そうな菓子が置いてある。条件反射的なアレで、ついつい手を伸ばしちまう。そんな不可抗力なオレ」
アリア「他の人の私物だって分かってて勝手に食べちゃったの? それは誰がどう考えたっていけないことってば」
セレシアス「食べ物といえば、俺も昔、食い逃げをしてしまったことがあるな……」
アリア「な、なんでまたそんな」
セレシアス「行き倒れ寸前で、意識が朦朧としてたんだろうなぁ。つい、金もないのに露天商の果物に手を出してしまって。はっと我に返って……とっさに逃げ出してしまったんだよ。そんなことするつもりはなかったんだが、結果的には泥棒だな。店主にはすまないことをした」
エルガー「《クリスタロス》に来る前の話か」
セレシアス「ああ。それから間もなく課長と出会ったんだよ」
エルガー「まあそう気に病むなって。誰だって叩けばホコリくらい出るもんだぜ。オレだってな」
アリア「エルガーの悪行って、なんとなく聞くのが怖いよねぇ。とんでもないことが出てきそうで。お菓子泥棒の他にもやっぱり何かあるの?」
エルガー「失礼な奴だな。悪行たって、せいぜい、この前ケンカになったときに自分が先に手を出しちまったとか、その程度だぜ? 可愛いもんだろうが」
セレシアス「……大の大人が殴り合いのケンカって」
エルガー「売られたケンカを買ってやっただけだ。もっとも、向こうにしてみりゃ相当高くついちまっただろうがな」
アリア「無駄に血の気が多いね〜。ホント、しょーがない大人だなぁ」