「しつれいします……」
職員室や生徒指導室を通り過ぎた奥に保健室はある。
今日はとりわけ体調がひどい。ここまで歩いたら再び息も絶え絶え、ヘロヘロのクラゲ状態になってしまった。
もたれるようにしてドアを開けると、白衣の女性がこちらを向いて目を丸くした。
「アリアちゃん、具合悪いのね?」
素早く支えてくれた手は、とても優しくて温かかった。
「顔色が真っ青よ。とりあえず横になって」
保健医のサルビア先生。華やかな雰囲気の美人で、きっちり塗られたルージュが今日もまばゆい。気さくで朗らかで、つまんない愚痴とか悩み事なんかも親身になって聞いてくれる、まさに学園の聖母のような存在だ。
もちろん生徒たちの憧れの的で、サルビア先生と話がしたくて保健室に入り浸る子もたくさんいるらしい。
朝、体調の優れないことが多いあたしも先生にお世話になりっぱなし。毎度すみません。
されるがままにベッドに寝かしつけられて、思わずほっと溜息が漏れた。
「担任の先生には私から言っておいてあげるから大丈夫よ。少し休むといいわ」
額に当てられた先生の柔らかな掌は、熱がないと分かると、するりと制服のリボンをほどいて楽にしてくれる。
ああ、ここは天使のいる聖域でしょうか。
あたしもいつか、サルビア先生みたいに素敵な女性になれるかなぁ。
そんなことをぼんやり考えているうちに、いつしか瞼が、トロトロと……
⇒ ……。