帰宅後、宿題や食事、入浴といった諸々を済ませて、あたしはパジャマ姿で勉強机に向かった。
「うーん、今日は何を書こうかなぁ」
書き始めてからこの数日間で、自分の作文力が小等部の頃の絵日記からたいして進歩していないことを嫌でも実感させられた。こういう出来事があった、こう思った。そんな感じで淡々と書き連ねることしかできないなんて、我ながらちょっと情けない。
それでも書くこと自体は楽しかった。SNSやブログなかとはまた違った面白さがあるのだろう。夜寝る前の儀式のようなものだ。これを済まさずに寝るわけにはいかない、そんな心境だった。
それにしても、書いた日記をセレシアス先生に提出するかと思うと一行目をなかなか書き出せない。日付とお天気だけ記した状態で、あたしはしばらく悩んだ。悩んだ結果、そのままを書き記すことにした。
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先生に日記を提出することになるなんて思ってなかったから、ちょっと驚いています。
今日より前の日記は、できれば見ないでくださいね。恥ずかしいから。
でも、ホームルームで先生が日記の課題について話を始めたとき、なんだか妙に嬉しかったんですよ。
あたし、日記をつけるのって、小等部のころ夏休みに絵日記を描いて以来。とても新鮮な気持ちです。
今のところ遅刻もしてないし。
このままの調子でずっといけたらいいな、って、思ってます。
今日もこれを書いたら寝るつもり。早起きにはまず早寝から。
先生は寝足りてますか? 全員分にコメントつけるなんて、大丈夫なんですか?
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そこまで書いて、最初から見直してみる。
「……これじゃまるで手紙ですね!」
思わずセルフ突っ込みしてしまいました。駄目だー、これはあまりにも読み手を意識しすぎてる!
もうちょっとなんとかしなくては。うぐぐ。
三十分経過。そろそろ寝ないとまた遅刻しちゃうよ。
さらに二十分経過。ああ、ホントいい加減にしないと!
……眠い……。
結局、日記帳を広げてから一時間以上経ってしまった。タイムリミット。もうこのまま提出することにしよう……。うぐぐぐぐ。
⇒ その後