屋上で遭遇したサボリ魔エルガー先輩に連れられて、なぜかあたしは学園七不思議を調べることになりました……。
 エルガー先輩は有無を言わさず、というか異論反論をものの見事にスルーして「さあ手始めに近場のヤツ行くぞー」と勝手に話を進めてしまう。どうなのこの傍若無人っぷり!
 なんとなく思考停止のまま、あたしは先輩の後について歩き出した。
「近場って?」
「ほれ、そこの屋上入口の左側。ドアがあるだろ」
 屋上に出入りできるドアから建物の中に入り、すぐ左手を見ると、確かに小さなドアがある。表面は埃でザラついて、いかにもずっと以前から放置されているような薄汚れた雰囲気だ。物置スペースだろうか。
「それは通称『開かずの小部屋』。異界への入口だと言われている」
 しかつめらしく解説してくれたけれど、突拍子がなさすぎて空々しい。
 扉は当然のように鍵がかかっていて、試しにノブを動かしてみても手応えなし。あ、手が汚れちゃった。
「一人で屋上に行く者を引きずり込もうとするらしいぞ」
「あたしさっき通ったけど、別になんともなかったよ」
「オレもだ」
 七不思議検証、十秒で終了。
 屋上と階段との間の狭い空間に、妙な沈黙がたち込める。当然といえば当然だけれど。
「じゃ、あたしはこれで」
 通り過ぎようとするあたしの首根っこを掴み、エルガー先輩はこともなげに言い放ったのです。
「次行くぞ次ィ」
 お一人でどうぞ、と力の限り言いたい!


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