「あら、協同任務とは珍しいですね」
ティキュは三課の廊下を歩きながら、傍らの上司を仰ぎ見た。
寡黙なレヴィスは無言で頷いて、一言だけ付け加える。
「悪いが、手伝ってやってくれ」
「もちろんです。可愛い後輩のためですしね」
にこりと笑いかけて、ティキュは上司と別れた。
──あれから五年。
異能者の地位は、あの頃に比べればかなりマシになってきている。
異能者の同僚や後輩もかなり増えた。
だが各種問題は未だに山積みで、《クリスタロス》での毎日は慌ただしい。
現に今も、出張先からいきなり呼び出され、後輩の手助けを頼まれたところだ。
(エルガー君ってば、すーぐ一悶着起こすんだから)
まあ色々と大変ではあるけれども、こうしてできることがあるという自覚は、気力をさらに充実させてくれる。
「さ、行きますか!」
エルガー君って、構うと面白いしね。会ったらまた苛めちゃおう。
──とかいう、その呟きは胸中に収めて。
ティキュは今日も颯爽と歩いている。
たとえ演劇舞台を降りても、今いるこの場所が彼女の『舞台』。
前を向いて、自分の足で現実を踏みしめて。
今の自分の道を、しっかりと歩いている。
END