「うわあ〜」
厳重な封を全て取っ払い、アルバムを開いたルリアだったが……
「ほえぇ〜」
ページを繰るたびに、思わずそんな声が漏れてしまう。
そこに収まっていた写真は、フェルンの過去の数々だった。フェルン、彼の姉たち、母親、友人。フェルンの人生遍歴を彩る様々な人物が映り込んでいるが、中でもルリアの目を引くのは、やはりフェルンの姿である。
≪◎年、●月○日。姉弟水入らず≫
十二、三歳と思しきフェルンが、双子の姉妹に長い髪を弄られている写真。
「うわぁ〜!可愛い〜!これ、フェルンだよね?フェルン!!」
≪×年、△月▲日。学祭にて≫
B級学校の学園祭だろうか。まだ幼さを残したフェルンが、純白のドレスを纏って嫌そうにヒロインを演じている。
「ホント、似合うね〜! 本物の女の子かと思っちゃったもん」
≪■年、☆月★日。必殺技習得記念≫
銀髪ベリーショートの闊達そうな姉が、何やら複雑な関節技を極めている。嬉々とした表情の姉に対し、フェルンは白目をむいてぐったりしていた。
「あははっ。楽しそうな家族だね!」
≪▼年、♪月*日。フルメイクに挑戦≫
双子の姉妹が、寄ってたかってフェルンに化粧を施している。服も女物を着せられて、ご丁寧に銀髪のウイッグまで装着済み。写真の隣には『女装は好青年の嗜みよ★』などという落書き(女性の筆跡)もあった。
「……フェルンって女装が好きなの?」
何と言うか、珍妙な写真ばかりで面白い。ついじっくり鑑賞していると、ルリアの背後で扉が開いた。
「あッ、るるルリアぁあー!?」
フェルンが帰ってきてしまったのだ。素っ頓狂な声を上げると、フェルンはルリアから秘蔵アルバムをひったくる。
「……見ィ〜た〜な〜ァ……?」
心底恨めしげなフェルンの視線を、ルリアは平然と受け止めて、
「楽しそうな家族でいいねぇ〜! そのアルバム、セリーザ様に見せたら喜ぶと思うよ☆」
なんの悪気もなく、言い放つのだった。
「あああああ恥ずかしい……! 実家に置いとくと姉さんたちに悪用されかねないから、わざわざ寮の部屋に隠しておいたのにっ」
「フェルンって女装似合うね〜」
「ルリア、このアルバムのことは誰にも内緒だぞ! なっ!?」
「えー、なんで? とっても素敵な写真ばっかりじゃない」
「とにかく極秘だ! 特にセリーザ様やエディック様には絶対秘密!」
「……ザイス様にも?」
「秘密ったら秘密ーッ!!」
本日の教訓。
封印とは、他人の目に触れられたくないもの、公にしたくないものを秘匿し、押し隠しておくためのものである。
発掘したからといって、無闇にそれを破ってはなりません。封印を施した人の意図を汲んであげましょう。
END